こんにちは、うりちきです。
夏の盛りも過ぎ、季節は少しずつ秋へと向かっていきますね。
真夏の暑さに革靴を敬遠されていた方も、ようやく気持ちよく愛用のオールデンを履いてあげられる季節がやってきます。
ただし、秋は台風のシーズンでもあります。不意の大雨でせっかくのコードバンが染みや水膨れになってしまわないよう、対策は万全にしておきましょう。
さて、革靴の名門として今や世界中に知られるオールデンですが、その発祥の地である「マサチューセッツ州」について、皆さまはどんな印象をお持ちでしょうか。
オールデン工場のある工業都市、大学の多い学術都市、あるいは寒さが厳しい土地――イメージは様々かと思いますが、歴史や文化を知ることで、きっとオールデンへの愛着はさらに深まるはずです。
そこで今回は「オールデンのふるさと」であるマサチューセッツ州に焦点を当て、この土地の文化・歴史・風土がどのようにオールデンと結びついているのかを紐解いてみたいと思います。

マサチューセッツ州はアメリカ東海岸に位置し、ボストンが州都です
マサチューセッツ州の工業都市としての歴史
まずは、マサチューセッツ州の工業都市としての側面と、オールデンが生まれた背景について簡単に触れておきましょう。
オールデンの歴史については過去記事で紹介していますので、ぜひ合わせてご覧になってみてください。
▶︎過去記事はこちら:オールデンの歴史と魅力:マサチューセッツ州で140年続く伝統とこだわり
アメリカの産業革命は、マサチューセッツ州を中心とする北東部から始まったとされています。
その後、19世紀から20世紀初頭にかけて繊維業や造船業などが発展し、やがてアメリカの靴産業を支える中心地へと成長しました。
20世紀半ばには、多くの製靴メーカーが大戦や世界恐慌の影響を受けて海外へ拠点を移すなか、この地に留まり続けたのがオールデンです。
現在もミドルボロウの工場で生産を続けており、マサチューセッツ州への強いこだわりが感じられます。
近年のマサチューセッツ州は、後述するように高等教育や研究機関の集積地としても知られています。
産業構造も大きく変化し、現在はコンピューターやソフトウェアに関するハイテク産業、さらにバイオを中心とするライフサイエンス分野など、新しい産業の拠点として発展を続けています。

MITのシンボルであるGreat Dome / マサチューセッツ工科大学
学術都市としてのマサチューセッツ
マサチューセッツ州を語る上で欠かせないのが、「学術都市」としての顔でしょう。
州都ボストンとその周辺には、ご存じハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)をはじめとして、全米屈指の名門校が数多く集まっています。
特にボストンは人口に占める学生の割合も非常に高く、知的好奇心とエネルギーに満ちた街として知られます。
このような学術的土壌は、街の装いやスタイルにも少なからず影響を与えてきたと考えられます。
古くから大学教授といった知識層が集まり、文化的施設も充実するボストンでは、質実剛健やクラシカルな装いが好まれてきたのでしょう。
また、マサチューセッツ州を含むアメリカ北東部で広まった「アイビー・ルック」、そこで定番となった「タッセルモカシン」が、オールデンによって生み出されたスタイルであることは、興味深い符合といえますね。
▶︎ “アイビー・ルック”と”タッセルモカシン”に関する話は過去記事でも取り上げています。
さらに、重厚なコードバンのローファーやプレーントゥは、ボストンという学術の街で「知的で信頼できる男の装い」を象徴する存在となりました。
マサチューセッツ州が育んだ知的風土が、オールデンを長きに渡り支えてきた――そう考えてみるのも面白いのではないでしょうか。

ボストン茶会事件の現場。ツアーに参加するとレプリカのお茶を海に投げ込むことができます
「自由」の象徴としてのマサチューセッツ
そして、やはりマサチューセッツ州とアメリカンスタイルを語るうえで、「独立運動」の話を避けて通るわけにはいきません。
マサチューセッツ州は、アメリカ独立革命の象徴的な舞台の一つとして知られています。
具体的な出来事への言及はここでは控えますが、「ボストン茶会事件」が独立の動きを後押ししたことはよく知られるところです。
その流れを受けて、今日のアメリカでは紅茶よりもコーヒー文化が根付いたともいわれています。
また、ボストン中心部の公園「ボストンコモン」から全長4kmに渡って続く「フリーダム・トレイル」は、独立の歴史を辿る散策路であり、まさに”アメリカの始まり”を象徴する場所といえるでしょう。

ボストンコモン(公園)から、映画「グッド ウィル ハンティング」のマット・デイモンとロビン・ウィリアムズの名シーンが生まれた
こうした背景から、マサチューセッツ州に「自分の足で未来を切り拓く」という自由への意思が根付いていることは、想像に難くありませんね。
「靴に足を合わせる」という従来の考え方とは対照的な、アメリカ靴らしい合理性の追求。「歩くためのギア」という理念を掲げるオールデンと、マサチューセッツ州が持つ「自由の精神」、そこには偶然ではない深い繋がりが感じられませんか?
▶︎オールデンの掲げる理念と、オーソペディックシューズというアプローチについては、ぜひ過去記事をご覧ください。

野球はお好きですか?レッドソックスの本拠地「Fenway Park」
マサチューセッツ州の風土とライフスタイル
最後に、マサチューセッツ州の魅力を語るにあたって、その自然環境についても触れておきましょう。
アメリカ北東部、東海岸に位置するマサチューセッツ州は、冬の厳しい寒さや積雪で知られています。
夏はしっかりとした暑さがあり、秋には全米でも有数の紅葉が街や森を彩るなど、四季の変化をはっきりと感じられる土地柄です。
州の西半分はアパラチア山脈の麓となり、内陸部の多くは自然が豊かで森林資源が豊富です。一方、東部のボストンは埋立によって発展した都市で、川や湾に面した景観を持ち、とりわけチャールズ川は市民にとっては大切なシンボルです。

チャールズ川。私たちは愛情を込めて「チャーリー」と呼びます
また、日本からの留学先として選ばれることも多く、アメリカの中でも住みやすい州としてしばしば名前の上がるマサチューセッツ州。オールデンファンであれば、一度は訪れてみたいと思う方も多いのではないでしょうか。
マサチューセッツ州で革靴産業が発展した背景には、自然環境の影響もあったといわれます。
州内を流れる河川の水力は工場の動力源となり、なめし工程に使用されるタンニンを含むオークの木も多く自生していました。
※なお、オールデン製品に使用されるコードバンを供給しているタンナー「ホーウィン社」は、イリノイ州シカゴに拠点を構えています。ミシガン湖付近のシカゴ川流域という、やはり水の豊富な地域です。
こうした土地の暮らし方を想像すると、街のビジネスシーンでは重厚なコードバンのローファーやプレーントゥを履きこなし、休日には郊外の湖や森林でインディーブーツや無骨なタンカーブーツを楽しむ――そんなバランスのあるライフスタイルが思い浮かびます。
オン・オフを問わず履きこなせるオールデンの靴は、このマサチューセッツ州の風土や暮らしぶりとも響き合っているように感じられますね。

冬も美しいですが極寒です。厚着をして来てください
まとめ
今回はオールデンを生んだマサチューセッツ州に焦点を当ててみました。
オールデンの魅力は、上質なコードバンの光沢や、履き込むほどに増していく味わいといった靴そのものにあります。
しかし、その背景にある土地の歴史や文化、風土を知ることで、靴への理解や愛着はさらに深まるのではないでしょうか。
工業都市としての記憶、学術都市の顔、自由を求めて歩んだ歴史、そして美しい自然と調和した暮らし――そうした要素の全てが、オールデンの靴に宿る精神と響きあっていると私は思います。
次にオールデンを履く時には、ぜひその背後に広がるマサチューセッツ州の街並みを思い浮かべてみてください。
あなたの愛靴から、より一層豊かな物語が感じられるかもしれません。
ここまでお読み頂きありがとうございました。