Alden Diary

《こだわり派の読書時間》革靴とアメリカ文学──オールデンが生まれた地の物語

マサチューセッツ州

マサチューセッツ州ってどんな文化?

 

こんにちは、うりちきです。

早いもので、2025年も終わりに近付いてきました。
少し気が早いですが、皆様はどのような一年を過ごされたでしょうか。

さて、先月の記事では「良いものを長く使う」という視点から、革が持つサステナビリティについてご紹介しました。
丁寧にケアすれば10年、20年と履ける革靴は、今改めて“持続可能な選択肢”として見直されています。

 

今回はその関連として、もう一つの視点に触れてみたいと思います。
それが、オールデンが生まれたマサチューセッツ州という土地の文化的背景です。

19世紀のアメリカ東海岸は、文化・社会が大きく動き始めた時代でした。
工業化が進むミドルボロウでオールデンが誕生した一方で、ボストンやその郊外では「人はどう生きるべきか」を問う作家や思想家たちが活躍していました。

そこで今回はいつもと少し趣向を変えて、オールデンの生まれた土地の物語と、そこから生まれた文学に焦点を当ててみます。
慌ただしい年末が近付くこの時期、ゆったりした週末の過ごし方として、当時の文化的背景に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

 

マサチューセッツ特有の価値観ってあるの?

マサチューセッツ特有の価値観ってあるの?

 

オールデンと同じ時代に──マサチューセッツという土地が育てた価値観と新しい文化

皆さまもご存知のように、革靴ブランド「オールデン」がマサチューセッツ州ミドルボロウで創業されたのは1884年のことです。

マサチューセッツ州を含むアメリカ北東部・ニューイングランド地方は、アメリカ大陸で最も古くイギリスからの入植が進み、商工業が発展した地域でもあります。
ピューリタン(清教徒)の精神を背景として、例えばこのような価値観が培われました。

- 勤勉であること
- 節度ある暮らしを尊ぶこと
- 必要なものを、長く大切に使うこと
- 他者に流されず、自分の良心に従うこと

これらは後のアメリカ文化の根幹を成し、同時に学問や文学が生まれる土壌にもなっていきます。

つまり、オールデンの出自ともいえるミドルボロウ周辺が靴製造で発展した背景には、良いものを長く使う文化が根付いていたわけです。

 

自分とは何か――マサチューセッツ州から始まるアメリカ文学

さて、アメリカ独立宣言後の19世紀前半には、「アメリカならではの文学を確立しよう」という動きが高まり、特にボストン周辺では革新的な作家が次々と登場しました。

Edgar Allan Poe

Edgar Allan Poe

代表格の一人が、エドガー・アラン・ポーです。
ミステリーの父とも称される彼も、この時代にマサチューセッツ州ボストンに生まれた作家です。
世界初の推理小説となる「モルグ街の殺人」や、ゴシック文学の先駆でもある「アッシャー家の崩壊」といった数々の新しい文学を世に送り出しました。
不安や緊張感を漂わせる独自の作風は、”静かな夜に読みたい文学”として、今でもなお強く支持されています。

 

Nathaniel Hawthorne

Nathaniel Hawthorne

また、セーレム出身のナサニエル・ホーソーンは、代表作の「緋文字」において、植民地時代の清教徒社会を背景に罪と贖いを描きました。
道徳と自由との狭間で揺れる人間の姿は、まさにニューイングランドという土地の思想的影響を色濃く反映しています。

こうした文学の広がりを受け、「自分とは何か」「どう生きるべきか」を探求する作品が多く生まれた1840〜1860年代は、アメリカン・ルネサンスと呼ばれます。
マサチューセッツ州は、その中心地の一つでした。

 

自然と思想を巡る──エマソンとソローという二人の巨人

その中でも「人はどう生きるべきか」という問いに深く踏み込んだ二人の作家・思想家がいます。
それが、アメリカ思想史の双璧ともいわれる「ラルフ・ウォルド・エマソン」と「ヘンリー・デイヴィッド・ソロー」です。

 

ラルフ・ウォルド・エマソン(1803-1882)

Ralph Waldo Emerson

Ralph Waldo Emerson

エマソンはボストン生まれの思想家で、アメリカ独自の精神文化を築いた中心人物です。
代表作の「自己信頼(Self-Reliance)」では、自分自身の価値観や感覚を信じることの大切さを説きました。

『心理は自分の内にあり、周囲の意見に流されることなく、自分の意思や判断に従って生きるべきである』

これが彼の信念であり、謙虚な心持ちでありながら自分が本当に望んでいることをする。そうすれば人はもっと自由に幸福になれるとエマソンは考えました。

流行に流されず、自分が良いと思った一足を選び、履き続ける。
そんな価値観は、オールデンを愛する多くの方が、日々の足元から実践しているものでしょう。

 

ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(1817-1862)

Henry David Thoreau

Henry David Thoreau

エマソンの弟子ともいえるソローは、マサチューセッツ州コンコード周辺で活動し、自然の中での生活から「本当に必要なものは何か」を問い続けた思想家です。
代表作「ウォールデン 森の生活」では、必要以上の物を持たずに暮らす自由が語られます。

「大量消費ではなく選び抜いたものを大切に使う」「物が人生を支配しないようにする」

彼の提言する思想は、現代でいうところの「ミニマリズム」や「シンプルライフ」に近い側面がありますが、大切な一足を長く履き続けるオールデン愛好家にも深く通ずるところがあるでしょう。
冒頭で触れた「サステナビリティ」志向とも関連し、現代において改めて読み返したい名著です。

 

Walden Pond

ウォールデン池

A Shine And Geekから一言

ソローは、エマソンが所有していた森の一角に小屋を建て、2年以上にわたってきわめて質素な暮らしを送りました。その森にはウォールデン・ポンド(Walden Pond/ウォールデン池)があり、代表作『ウォールデン 森の生活』は、まさにそこでの体験と思索をまとめた一冊です。

私もこの場所を訪れ、鱒を釣ろうとしてみました。けれどソロー自身、著書のなかで「この池には魚があまりいない」と記しています。実際に竿を出してみると、その言葉が妙に現実味を帯びて感じられたのです。笑

ソローが暮らした小屋の跡

ソローが暮らした小屋の跡

まとめ

今回は、オールデンが生まれたマサチューセッツ州という土地に根付いた文化や思想、そしてそこから生まれた文学についてご紹介しました。

- 勤勉さ・節度・自分の信念を貫く姿勢
- 必要なものを長く大切にする価値観
- 自然と向き合い、本質を見極める感性

こうしたニューイングランドの精神は、修理しながら長く履ける靴を作り続けてきたオールデンの理念とも響き合っていると考えます。

ところで、エマソンやソローの著作はAudibleなどのオーディオブックサービスでも楽しめます。
お気に入りの一足をブラッシングし、深煎りのコーヒーを淹れて、耳から文学に触れる──そんな週末はいかがでしょうか。

年の瀬が近付いて気持ちも慌ただしくなる季節、マサチューセッツ州が育んだ文化に少しだけ思いを馳せながら、オールデンと共に「静かで贅沢な時間」をお楽しみいただければ嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

-Alden, Diary
-

Copyright© オールデンのコードバンが大好き by A Shine And Geek , 2025 All Rights Reserved.