こんにちは、うりちきです。
この夏はパリオリンピックが開催されていますね。スポーツ観戦としては勿論、世界中の文化や特色が垣間見える良い機会です。
そこで今回は、各国の革靴の歴史や文化に焦点を当ててみようと思います。
オールデンを生み出したアメリカ、聖地ノーサンプトンを有するイギリスなど、国ごとの特色の違いを楽しんでみてください。
革靴の歴史
各国の革靴の歴史や特徴を紐解く前に、まずは革靴自体の歴史について簡単に触れておきましょう。
革靴の歴史は非常に長く、その起源は紀元前にまで遡るといわれています。当時の革靴は、主に足を保護するために動物の皮を使って単純に作られていました。
現在、私たちが想像するような「革靴」が本格的に誕生し始めたのは15世紀頃のことです。
この時代は、ローマ帝国の滅亡後、中世の時代が終わり、大航海時代に突入した頃にあたります。一方、日本では室町時代の中期から戦国時代に差し掛かる時期でした。
この時期に、「ラスト」と呼ばれる木型を使用した製作手法が誕生し、革靴の製作が効率的に行われるようになりました。
この技術革新によって革靴の量産が可能となり、革靴の歴史における大きな転換点となりました。
さらに、革靴の歴史における第二転換点は、19世紀初頭の産業革命の時期です。
この時期に、ミシンやプレス機といった新しい技術が登場し、イギリスをはじめとする世界各地で産業革命が進展、革靴の生産性も爆発的に向上しました。
この頃、独自の工房を持つ靴職人も増え、革靴の製法が多様化していきました。
例えば、オールデンでも採用されている「グッドイヤー・ウェルテッド製法」のような製法が確立されたのもこの時期です。
これらの製法は、革靴の耐久性や履き心地を向上させ、現在でも多くの革靴ブランドで使用されています。
それでは続いて、各国の革靴の歴史や特徴を深掘りしてみましょう。
アメリカ:オールデンを生み出した合理主義の国
まずは、やはりオールデン好きであれば最初に抑えたい、アメリカの革靴についてご紹介します。
現在の革靴で多く用いられている「グッドイヤー・ウェルテッド製法」や「マッケイ製法」は、19世紀にアメリカで誕生しました。
それまでは手縫い(ハンドソーン・ウェルテッド製法)が主流でしたが、西部開拓時代の人口拡大や南北戦争による軍需用の急増に対応するためにこれらの製法が開発されました。
アメリカの革靴は、つま先の高さに余裕を持たせたり、形状に丸みを持たせるなど、従来の英国靴に対して合理主義を取り入れたデザインが特徴です。
デザインだけでなく履きやすさも両立させたアメリカ革靴は、機能性とスタイルを兼ね備えた唯一無二のものとなっています。
アメリカは独特の持ち味で革靴の一大産地となりましたが、経済性を追求して海外に生産拠点を移すメーカーが続出しました。
その中でも、純アメリカ製を維持しているのが、「オールデン」です。
当ブログ読者の方には恐らくおさらいとなりますが、オールデンの創業は1884年で、チャールズ・H・オールデン氏によって創業されました。
創業当時について関連記事も参考にしてください。
オールデンの特徴は、足型を考え抜いた豊富な木型にあり、優れたフィット感と快適な履き心地では他の追随を許さない、ともいえるでしょう。
まさに「アメリカ靴の王様」といえる存在です。
さらにもう一つ、現在も純アメリカ製を維持しているのが「アレン・エドモンズ」です。
こちらは比較的最近となる1922年に、エルバート・W・アレン氏によって創業されました。
アレン・エドモンズの特徴として、靴本体とヒールの接合に釘を一切用いないことや、鉄製のシャンクを使用しないことがあります。
アメリカ靴らしい足への馴染みやすさや、長時間歩行でも疲労しにくい作りが魅力です。
イギリス:聖地ノーサンプトンの伝統的革靴
イギリスは世界で最初に産業革命が始まった国であり、現在のような革靴の歴史が一気に開花したのも英国です。
17世紀になるとイギリスのノーサンプトンに靴職人が集結し、革靴作りが盛んに行われるようになりました。
現在も国際的に知られる革靴の聖地であるノーサンプトンですが、この地で革靴作りが盛んになった理由ははっきりしていません。
一説には、牛が多く放牧されていたため牛革が採りやすかったことや、なめし剤となるタンニンを多く含むオークが自生していたことが挙げられます。
オークの木はラストにも使われ、ノーサンプトンが交通の要所であったことも、革靴作りが発展する要因となったとされています。
また、ピューリタン革命の指導者であるオリバー・クロムウェルがノーサンプトンに多数の靴作りを依頼したことが発展の礎となったともいわれており、彼は「靴産業の始祖」とも呼ばれています。
世界に先駆けて靴産業が始まったイギリスの革靴は、やはり伝統的なデザインが特徴です。
歴史の長いシューブランドが多く、質実剛健と表現されることもあります。
イギリスの革靴メーカーといえば、「トリッカーズ」が代表的ですね。
トリッカーズは英国王室御用達の最古参のシューファクトリーで、創業はオールデンより半世紀程前の1829年です。
王族の狩猟に使われた堅牢なダブルソールを備えたブローグシューズが特に有名です。
1849年創業の「ジョン・ロブ」も、ビスポーク靴作りの名門で、キング・オブ・シューズともいわれます。
現在ロンドンのセント・ジェームス・ストリートにある工房は、ビスポークシューズの専門店として世界中の靴愛好家に愛されています。
1873年創業の「チャーチ」は、初めて左右非対称で革靴を設計したブランドとしても知られています。
また、ハーフサイズを取り入れた老舗でもあり、映画「007」のジェームズ・ボンドが愛用したことでも有名です。
イタリア:伊達男の足を彩る華やかな一足
イタリアの革製品の歴史は古く、フィレンツェやミラノなどの都市で職人による技術が発展してきたのは、中世のルネサンス期まで遡ることができます。
しかし、近代的な靴産業が本格的に起こったのは第二次世界大戦後で、アメリカやイギリスと比べると歴史は比較的浅いといえるでしょう。
イタリアの伊達男の足を彩るイタリア靴は、丈夫さよりも見た目重視のものが多いです。
コバの張りがなく、甲が低く、細身で美しいフォルムを描くのがイタリア靴の特徴です。
幅広な足の方が多い日本人には履きこなすのが難しいともいえますが、華やかなイタリアンスーツにはぴったりの軽快な美しいデザインは世界中で愛されていますね。
またイタリア国内で生産された革は「イタリアンレザー」と呼ばれ、コードバンと並ぶ「世界三大レザー」に数えられています。
手作業での細かな仕上げや、独自の染色技術によって、一足一足が独特の風合いや個性を持つ、という点もイタリア革靴の魅力といえるでしょう。
イタリア発祥の革靴ブランド「サントーニ」は、1975年にアンドレア・サントーニ氏によって創業されました。
他ブランドよりかなり歴史が浅いにも関わらず、イタリアを代表するトップブランドの一つとされます。
靴のデザインによって製法を使い分ける、専門の手染め部門を持つなど、高いこだわりと技術力で芸術品のような一足を生み出しています。
世界中の革愛好家から愛される「ステファノ・ベーメル」は、稀代の革職人といわれるステファノ・ベーメル氏が、1988年にフィレンツェで創業しました。
世界最高峰の技術による良質な革の魅力を全面に押し出した革靴は、伊達男の足元を上品に彩ります。
日本:高い縫製技術とこだわりの品質
古来から草履や下駄といった履き物を使用していた日本に、西洋の革靴文化が入ってきたのは、江戸時代末期から明治時代の初期です。これが日本の革靴の歴史の始まりといえるでしょう。
具体的には、1870年の3月15日が、築地に初めて近代的な靴工場が設立された日であり、「靴の記念日」として記念日に登録されています。
当時は軍人をはじめとした上流階級の人々のみが使用していましたが、第二次世界大戦後の1950年から1970年代頃にかけて、民間向けの国産革靴も浸透していきました。
欧米と比べると圧倒的に歴史の浅い日本製の革靴ですが、その技術力は非常に高く、色斑がなく、ステッチが正確で、丁寧な仕上げが特徴です。
この点は個人の好みによるところもありますが、品質の高さは世界でも広く認識されています。
日本の革靴は、当初は機能を重視したビジネスシューズが主流でしたが、近年ではスタイリッシュなデザインやドレッシーな革靴も増えてきています。
1872年に創業された「大塚製靴」は、日本に西洋靴の文化を定着させた老舗革靴ブランドです。
皇室向けのビスポークシューズを手がけることでも有名であり、日本の革靴の歴史を紐解くには、まずはこのブランドの150年の歩みを追ってみるとよいでしょう。
代表的な日本の革靴ブランド「スコッチグレイン」は、1978年に日本のシューメーカーであるヒロカワ製靴が始めました。
全てのモデルにグッドイヤーウェルテッド製法を採用しており、大切に愛用することで長く使い続けていくことができます。
糸の一本にまでこだわった高い品質の素材と、日本人の足によく合うラストで、日本のビジネスマンや革靴愛好家に人気のブランドです。
フランス:伝統と芸術のバランス
最後に、パリオリンピックにちなんで、フランスの革靴について軽くご紹介します。
フランスの革靴産業の歴史は、19世紀の産業革命期以降に遡るとされます。
パリやリヨンといった都市部を中心に革靴作りが盛んになりましたが、ファッションの中心地であるパリは、フランスの高級革靴ブランドが生まれる土壌となりました。
フランスの革靴は、イギリスとイタリアの良いとこ取りともいわれ、伝統と芸術のバランスに優れた洗練されたデザインが魅力です。
代表的なフランスの老舗革靴ブランドとして、1891年に創業された「J.M. WESTON」が挙げられます。
フランス国内に自社のタンナーを持つ数少ないブランドの一つであり、上質なレザーが魅力です。
創業者のエドゥアール・ブランシャール氏の息子、ユージェーヌ氏が、ボストン近郊のウェストンでグッドイヤー・ウェルテッド製法を学び、その技術が色濃く取り入れられています。
コレクションにはローファーが多く、フレンチトラッドのアイコンとして世界中で愛されています。
また、フランスの高級靴ブランド御三家の一つ「AUBERCY」は、1935年にオーベルシー兄弟が創業しました。
創業者がイギリスで靴作りを学んだことで、当初はイギリス靴の影響を強く受けていましたが、その後生産工場をイタリアに移すことでイタリア靴の繊細さも取り入れました。
イギリス靴の伝統とイタリア靴のエレガンスを融合させた、フランスらしい革靴を作り出しています。
まとめ
今回は、5つの国の革靴の歴史や特色、代表的ブランドについてご紹介しました。
一口に革靴といっても、デザインや履き心地にそれぞれの国柄がよく現れていて、比較してみると面白いですね。
また他の国の靴と比べることで、オールデンの特徴や魅力が再確認できたのではないでしょうか。
この記事が色々な国の文化や歴史に触れてみるきっかけとなれば幸いです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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