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オールデン研究家のSumireが降臨しました。今回はオールデンのタッセルモカシンにまつわる小話をまとめました。日本ではラコタハウスから「563」「664」が販売されています。実はタッセルモカシンは歴史が浅く、誕生にはオールデンが深く関わっている靴です。靴好きなら知っておくべき?タッセルモカシンのあれこれをご紹介します。
タッセルモカシンとは?
タッセルモカシンは、“タッセル”と呼ばれる房飾りを甲の中央部にあしらっています。もともとは宮廷での室内履きや兵士用のブーツなど、欧州の靴で多かった意匠です。一般的にコインローファーのサドルが付く部分にタッセルが付いたものを、タッセルローファーと呼びます。その他にもタッセルスリッポン、タッセルモカシンなどタッセルを使った靴は様々な呼称が混在しています。また、これらのタッセルスリッポン(タッセルモカシン)はコインローファーよりもカジュアルすぎないため、スーツに合わせやすいと言われています。
“モカシン”は靴の甲の部分がU字に縫われているものを指します。もともとアメリカの先住民が履いていたスリッポンタイプの靴のことをモカシンと呼んでいて、タッセルシューズ以外にもコインローファーやデッキシューズなどにもモカシン縫いが用いられています。
少し話は逸れますが、高校生の頃ほとんどの学生がコインローファーを履いている中、タッセルローファーを履いている子もいて、コインローファーより上品に見えるなと思っていました。なんというか、私立のお嬢様感が出るような感じです。
そんなタッセルモカシン、実はAldenと深いつながりがある靴なのです。それはどういうことかと言うと・・・
タッセルモカシンはAldenが生み出したスタイル
タッセルモカシンはAldenが生み出したスタイルということはご存じでしょうか?Aldenが1948年に創り上げた比較的新しいスタイルで、その後アメリカを代表する紳士服ブランドの「Brooks Brothers(ブルックスブラザーズ)」が採用したことから世の中に広まりました。タッセルモカシンがAldenで作られたのには次のような経緯があります。
アメリカのハリウッド俳優ポール・ルーカス(1891~1971) 彼はハンガリーに生まれ、ヨーロッパで演劇や舞台を経て1927年アメリカに渡りました。以来、名脇役として活躍し有名どころでは「若草物語」「ラインの監視」「海底二万哩」などに出演しています。ルーカスがイギリスで見つけたタッセル付きの紐靴を、アメリカへ帰って「もっとシンプルなデザインにできないか?」と靴店に依頼したことが制作のきっかけです。ニューヨークとロサンゼルスの靴ブランドにそれぞれ依頼しましたが、図らずも両社ともAldenに制作依頼を持ち込んでいます。当時から「このような要求に応えられるのはAlden社だけ」と信頼されていたのですね。
タッセルモカシンの誕生秘話(制作にどれくらいかかり、誰が制作に関わったかなど)は知られていませんので残念ながら詳しいことは分かりません。しかしAldenで細身のラスト(木型)を採用した最も古いモデルとも言われていて、ドレッシーなフォルムで足元をエレガントに演出してくれる1足です。
タッセルモカシンはどのように広まっていったのか
タッセルモカシンは主にアメリカで人気があるとされています。どのようにアメリカで広まっていったのか気になったので私なりに考察してみました。
ポール・ルーカスの依頼によりタッセルモカシンが生まれた後、1957年にBrooks Brothers(ブルックスブラザーズ)が販売し始めたことでアメリカに浸透して行きましたが、その背景には“アイビー・ルック”と言われる若者たちのファッションの流行がありました。
アイビー・ルックとは?
アメリカ北東部にある8つの私立大学のことをアイビー・リーグといいます。構成大学はブラウン大学、コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス大学、ハーバード大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学、イェール大学でいずれも長い歴史があり、世界的にも知名度の高い“東海岸の裕福な人が通う私立エリート校”といった感じです。
もともと8大学によるスポーツリーグのことをアイビー・リーグと呼んでいて、Inter-Varsity(一軍同士)の試合ということで省略してIvy、または観葉植物でも人気のアイビーを大学の卒業式で植える習慣があったためIvyと呼ぶようになったとも言われています。
アイビー・リーグに通う学生たちのファッションは“アイビー・ルック”または“アイビー・スタイル”として、アメリカ発のファッションとして現在も一つのスタンダードになっています。コーディネートの組み合わせとしてはオックスフォードシャツにネイビーのブレザー、アスコット・タイといったものや、チノパンにポロシャツの上にスポーツジャケットといったものが流行りました。ハーバード大学を卒業したJ・F・ケネディのファッションもアイビー・ルックとして雑誌で度々取り上げられたりしています。最近のドラマで例えるなら「ゴシップガール」の世界と言えば分かりやすいでしょうか。
Brooks Brothers(ブルックスブラザーズ)による宣伝力!
1957年にタッセルモカシンを売り出したBrooks Brothersは世界最古の紳士服ブランドで、アメリカン・トラディショナル・スタイルの代表ブランドであり、2018年には創業200周年を迎えています。リンカーン、ケネディ、オバマなど歴代アメリカ大統領も愛用してきたブランドです。そんなBrooks Brothersがアイビー・ルックを意識したファッションを大々的に販売するようになり、タッセルモカシンが定着していったという流れなのだろうと思います。アイビー・ルックでは靴はローファーを着用するのが好まれ、必ずローファーというわけではありませんが、コインローファーやタッセルモカシンが好んで着用されています。
ビジネスカジュアルとしてのポジションを獲得
タッセルモカシンは“弁護士の靴”とも言われています。というのも、アイビー・リーグを卒業した学生が弁護士になり、ビジネスでもタッセルモカシンを愛用していたからで、アメリカでは依然人気のあるスタイルです。日本でも1960年代にアイビー・ルックが流行した頃は今よりタッセルモカシンを履いている人が多かったようですが、今は以前より見かけなくなったのでは?と思われます。ともあれ、アメリカや日本ではタッセルモカシンはビジネスカジュアルな履きこなしが可能なスタイルとされていて、ビジネス用ではないものの、カジュアルかつ贅沢に装いたい際に強力な味方となってくれる靴です。
Aldenのタッセルモカシン「563」「664」の基本情報
オールデン「563」
ラスト:アバディーンラスト
スタイル:タッセルモカシン
素材:ホーウィン社のシェルコードバン
カラー:#8(ダークバーガンディ)
ソール:シングルレザーソール
ウェルト:270度フラットウェルト
オールデン「664」
ラスト:アバディーンラスト
スタイル:タッセルモカシン
素材:ホーウィン社のシェルコードバン
カラー:ブラック
ソール:シングルレザーソール
ウェルト:270度フラットウェルト
Aldenのタッセルモカシンの定番商品は「563」と「664」という品番になります。どちらもAldenの代名詞とも言えるコードバンを使用しており、ラスト(木型)はドレス系のアバディーンラストで作られています。作りはどちらも同じでカラーが違い、「563」は赤みがかったワイン色の#8(ダークバーガンディ)、「664」はブラックです。日本ではAldenを扱っているラコタハウスで取り扱いがあるので、よろしければラコタハウスのホームページもご覧ください。
タッセルモカシンは使われている革の素材によってドレッシーさに違いが現れます。コードバンはとても高級感があるためドレッシーさの高いタッセルモカシンとなっています。アメリカではカーフのタッセルモカシン、スエードのタッセルモカシンも流通していて、例えば以下のような品番があります。
・カーフスキンのタッセルモカシン
「561」(ダークブラウン)
「660」(ブラック)
「662」(バーニッシュドタン※ビンテージのような雰囲気のブラウンカラー)
「663」(バーガンディ)
・スエードのタッセルモカシン
「666」(モカキッド※子ヤギの革)
「3403」(スナッフ※嗅ぎたばこ色)
最後に
タッセルモカシンにまつわる小話をお届けしてきました。よく成り立ちが分からないなりに高校時代に感じていた“タッセルローファー=お金持ちのエリート感”という印象が歴史的にも整合性があり面白いと感じました。タッセルが付いていると豪華ですがスリッポンタイプなのでどこかリラックスしている、そんな魅力のある1足だと思います。ちょっと遊び心を持ちつつ正統派な印象を与えてくれるタッセルモカシン、みなさんもコレクションに加えてみてはいかがでしょうか?
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