Alden Diary

《オールデンの醍醐味》コードバンの経年変化(エイジング)を楽しむためのポイント

こんにちは、うりちきです。

オールデンファンや革靴好きの方であれば、経年変化(エイジング)に魅了されている人も多いでしょう。

特にオールデンのシェルコードバンは、使い込むほどに独自の味わいが増していき、その変化は持ち主の履き方や手入れの仕方によって異なる唯一無二のものです。

そこで今回は、もう少し広く「コードバンの経年変化」に焦点を当てて、どのようにその表情が変わっていくのか、革の経年変化のメカニズムや変化の仕方、なめし材や仕上げによる違いについて詳しくみていきたいと思います。

Black Cordovan

オールデンのブラックコードバン

 

ホーウィン社のシェルコードバンについて

まず、オールデンに使用されている「ホーウィン社のシェルコードバン」について少し触れておきましょう。

ホーウィン社は米国シカゴの老舗タンナーで、約100年の伝統をもつシェルコードバンを生産しています。

オールデンに使用されるコードバンは、「タンニンなめし」の後に「オイル仕上げ」が施され、重厚でギラリとした深い艶が最大の魅力です。

使い込むごとに表面に味わい深い光沢が増し、履き手にとってまさに「育てる」楽しみが詰まった革といえるでしょう。

ホーウィンレザー正面の画像

オールデンのコードバンの源流とも言える場所

ホーウィン社のコードバンについては、過去記事で詳しく解説しています。

オールデンを語るなら老舗タンナー「ホーウィン社」のコードバンを語れ

 

革製品の経年変化(エイジング)とは?

革靴や革小物といった革製品を長く使うことで、少しずつ見た目や手触りが変わっていきますが、これを経年変化(エイジング)と呼びます。

これは革ならではの特徴で、具体的には、「光沢が増す」「形状が変わる」「色が濃く(または淡く)なる」といった変化を経ながら、『持ち主だけの一品』へと成長していきます。

経年変化には、革のなめしや仕上げ方、さらに持ち主の使用状況や手入れの頻度なども影響します。

それではもう一歩踏み込んで、コードバンに起こる経年変化のメカニズムについて詳しくみていきましょう。

 

革の経年変化(エイジング)のメカニズム

そもそもなぜ、革製品は経年変化を起こすのでしょうか。それにはいくつかの要素が関係しています。

・タンニンの酸化:

オールデンのコードバンは植物由来のタンニンでなめされていますが、タンニンは酸化しやすく、色合いが変わりやすいのが特徴です。これにより、色に赤みがかかる、または黄味が増すといった変化が起こります。そのため「タンニンなめし」の革は、「クロムなめし」の革よりも経年変化が起こりやすいとされます。

 

・オイルの浮き出し:

革に含まれるオイルが、使用するうちに表面に浮き出し、それによって独特の艶を生み出します。とりわけホーウィン社のシェルコードバンはオイルを多く含むため、使うほどに輝くような光沢が増していきます。

 

・コラーゲン繊維の変化:

グレージング(磨き)工程により寝かされた革繊維が、使用することで立ち上がって深みのある光沢を生み出したり、反対に使い込まれて繊維が寝ることで最初は硬かった革が滑らかな手触りへと変化します。

 

・その他にも:

「手の油分によるコーティング」や「摩擦」「日焼け」といった様々な要素が重なり合うことで、使い込まれた革独特のしなやかさや風合いが生まれるわけですね。表面がスムースなコードバンには傷がつきやすいですが、この細かい傷の一つ一つも魅力的なエイジングといえます。

 

ホーウィン社の内部画像

ホーウィンレザーの内部

tips)タンニンとは?革の経年変化に与える影響

タンニンとは、ほとんどの植物の樹皮や種子などに含まれるポリフェノールの一種です。

タンパク質と作用してゼラチン溶液を沈殿させる性質をもち、皮のなめし工程ではコラーゲン(タンパク質)に作用して、腐敗しない革に変える(=なめす)役割を果たします。

革に含まれるタンニンは酸化しやすく、それが経年変化による色の変化の要因の一つとなります。使用するタンニンの種類によって、変化の仕方や色味(赤みがかる、黄色がかる)も変わります。

また、タンニンによりなめされた革は、クロムなめしと比べて「可塑性」が強くなる(=形が変化しやすい)性質があります。これにより経年変化として艶が出やすくなります。

 

牛革とコードバンの経年変化の違い

牛革(カーフ)とコードバンは、どちらも経年変化を楽しめる革ですが、その変化には違いがあります。

馬の臀部の皮を使用したコードバンには「コードバン層」と呼ばれる密度の高い繊維層があり、この繊維密度は牛革の5ともいわれます。

これがグレージングによって寝かせられることで、使用するほど、しなやかな艶と独特の深い光沢が現れ、長年愛用した牛革とは違った変化を楽しむことができます。

ちなみに馬革には、臀部のコードバン以外にも、首部分を使用した「ホースフロント」や胴体部分を使った「ホースハイド」などがあり、それぞれが異なる特徴や経年変化を楽しめます。

ルイスレザーのサイクロン タイトフィット

サイクロン441T(タイトフィット)です。素材はホースハイドで、色は黒を選びました。

上記写真はレザーウェアブランドである「ルイスレザー(Lewis Leathers)」のジャケットで、素材はホースハイドです。見た目も手触りもコードバンよりしなやかな印象を受けます。ルイスレザーについては過去記事で詳しく解説しています。

ルイスレザーのライダースジャケットはオールデンにもコーディネートできる。

 

革の仕上げによる経年変化の違い

コードバンの経年変化は、仕上げ方によっても違いが大きく表れます。以下に代表的な3つの仕上げ方法を見てみましょう。

1. オイル仕上げ

オールデンに施されている「オイル仕上げ」のコードバンは、特に変化が表れやすい革です。

オイルが含侵されているため革に柔軟性が生まれ、長年使用していくことでオイルが表面に浮き出て自然な光沢が増していきます。

履き皺が刻まれたり、摩擦によって艶が出やすいのもオイル仕上げならではの特徴といえるでしょう。ちなみに財布やカードケースといった革小物の場合、内容物による凹凸の変化が出やすいことで有名です。

ホーウィンのサンプル画像

ブラックとダークバーガンディ(#8)コードバンのサンプル

オールデンの場合、ブラックやダークバーガンディ(#8)といった濃色のコードバンは、艶感の変化を実感しやすい色合いで、使い込むほどに深みが増す美しい経年変化を楽しめます。

特にグレージング加工を行っていない、表面がマットなオイルコードバンは、使い込むほどに分かりやすく表面が輝くようになります。

ユーザーによって経年変化が大きく異なる、奥深い素材であるといえます。

2. 染料仕上げ

染料仕上げのコードバンは、「アニリン仕上げ」や「水染めコードバン」とも呼ばれますが、オイル仕上げと比べると硬めの質感です。

経年変化による形や色味の変化が緩やかで、淡いカラーでは使用によって徐々に色が濃くなるのが特徴です。

使用環境にもよりますが、グレージングにより寝かされた繊維が摩擦や折り曲げによって立ち上がったり、また油分を含んだクリームで手入れすることによって、オイルコードバンのような深みのある艶が生まれる経年変化を楽しむこともできます。

3. 顔料仕上げ

「顔料仕上げ」のコードバンは、世界的に見るとかなり珍しいコードバンですが、日本では昔からランドセルの素材として使用されています。

表面が仕上げ材で覆われているため耐久性が高く、上記二つの仕上げと比べると経年変化のしにくいコードバンです。

エイジングを楽しむというよりも、新品の風合いが保ちやすいという利点を持った革といえますね。

 

経年変化による色の変化

コードバンは経年変化によって色合いがどのように変化するのか、という問いですが、カラーによって異なる、が正解です。

オールデンのようなオイル仕上げのコードバンは、染料が入りにくく、経年変化で色味が抜けやすいといわれます。

例えば、オールデンに人気のダークバーガンディ(#8)の場合、黒味が抜けて明るみが増し、赤っぽくなることが多いようです。

また、希少カラーのウイスキーやラベロ、シガーといった淡い色味の場合、タンニンの酸化によって徐々に色が濃くなっていくのが魅力です。入手するのが難しいことが難点ですが、ぜひ経年変化を楽しみたい一足といえます。

レアカラーの微妙な色の違い

左からウイスキー、ラベロ、ダークバーガンディー、ブラック

 

オールデンのレアカラーコードバンを入手する方法については、過去記事も参考にしてみてください。

【超難関?】オールデンレアカラーコードバンはどうやったら手に入るのか?

 

ちなみに、ホーウィン社のコードバンは個体差が大きいことでも知られ、同じカラーでも一足一足の色合いやムラが異なります。この「均一ではない」ことこそ、アメリカ製靴ならではのオールデンの魅力といえるでしょう。

 

経年変化を美しく進めるためのケア

革の経年変化は、その革製品の歴史を表し、成功や失敗と一概に言えるものはありません。

一般に美しいと言われる経年変化を目指すためには、「カビの発生を防ぐ」「水濡れによる水脹れを防ぐ」といった適切な手入れをしたいものですね。

また色付きのオイルやクリームを適切に使用することで、シミやムラを防ぐこともできますが、それらも変化の一つといえるので、この辺りは個人の裁量によるといえるでしょう。

防水スプレーは表面の光沢や風合いを損ねる可能性があるので、経年変化の観点では、使用はなるべく慎重になりたいものです。

 

まとめ:コードバンの経年変化を楽しもう

コードバンの経年変化は、お手入れの仕方や、使用者の生活スタイルなどに大きく左右されます。

特に「タンニンなめし&オイル仕上げ」であるホーウィン社のシェルコードバンは、エイジングの魅力が特に感じられる革素材で、年月とともに「世界にひとつだけの一足」へと育っていくのがオールデンのコードバン最大の魅力、ともいえるでしょう。

愛用のコードバンがどのような色味や光沢へと変わっていくのか、ぜひ長く楽しみながら、その変化を見守ってみてくださいね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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