
こんにちは、うりちきです。
9月に入りましたが、まだ暑さの残る日が続きますね。
一方で、これからは台風や秋雨も気になる時期です。朝の天気予報を見ながら、どの靴を履こうか考える方も多いのではないでしょうか。
以前の記事では、雨の日に履くオールデン、休ませるオールデンという視点から、素材やソール、その日の予定に合わせた履き分けについてお話ししました。
そこからもう一歩踏み込んで、雨の可能性がある日にも比較的選びやすい素材として今回注目したいのが、油分を多く含む「クロムエクセルレザー」です。
オールデンといえばシェルコードバンの印象が強いですが、インディブーツをはじめとする実用的なモデルでは、クロムエクセルも魅力的な選択肢となります。
そこで今回は、クロムエクセルとはどのような革なのか、独特の表情はどのように生まれるのか、そして雨の日にはどこまで頼れるのかを見ていきましょう。
クロムエクセルは、ホーウィン社を代表する革のひとつ
クロムエクセルは、アメリカ・シカゴの老舗タンナー、ホーウィン社が作る革です。
当ブログでは、オールデンへコードバンを供給するタンナーとして、これまでもホーウィン社をご紹介してきました。

赤レンガに囲まれた工場。壁の向こう側で働く者の気配を感じることができる
ホーウィン社と言えばやはり「シェルコードバン」が有名です。ですが同時に「クロムエクセルレザー」もまた、100年近く受け継がれてきた製法を現在に残す、ホーウィン社の看板といえる素材です。
クロムエクセルはその名前の通り、「クロムなめしの革」です。
しかしもっと正確に言えば、クロムなめしを土台としながら、樹皮由来の成分などを用いた再なめしを行う、コンビネーションなめしの革となります。
クロムなめしによるしなやかさや丈夫さに、植物由来の成分による再なめしを加えることで、クロムエクセル独特の質感や経年変化が生まれるというわけですね。
次に、クロムエクセルレザーの具体的な製造工程について見てみましょう。
89の工程と「ホット・スタッフィング」
ホーウィン社のクロムエクセルは、少なくとも89の工程を経て、完成までに28営業日を要すると言われます。
数字だけでも手の込んだ革であることが伝わりますが、中でも特徴的なのが「ホット・スタッフィング」と呼ばれる工程です。
これは、常温では固体となるオイル、ワックス、グリースなどを、蒸気で温めたドラムを使って革の内部へ浸透させるものです。
ホーウィン社では、牛脂や蜜蝋などを含む独自の配合を用いています。
最後はアニリン染料を使って手作業で仕上げることで、革本来の風合いや色の濃淡を生かした表情になります。
新品の時からどこか柔らかく、しっとりとした手触りがあり、足の動きにも馴染みやすい。
一方でブーツに仕立てれば、見た目にはしっかりと無骨さが残ります。この柔らかさと存在感の組み合わせも、クロムエクセルならではですね。
色が動く「プルアップ」と、傷まで表情になる経年変化
クロムエクセルを手に取った時に分かりやすい特徴の一つが、「プルアップ」です。
この革を曲げたり押したりすると、内部の油分やワックスが一時的に移動することで、その部分の色が明るく見えます。この濃淡の動きが、平面的ではない豊かな表情を作り、クロムエクセル特有の魅力となります。
靴になれば、履き皺の山は少し明るくなり、触れることの多い部分には艶が生まれます。
つま先や側面についた浅い擦れも、ブラッシングしたり指で軽くなじませたりするうちに、目立ちにくくなることがあります。
もちろん傷そのものが消えるわけではありませんが、クロムエクセルは多少の擦れや色むらが加わっても、それが不自然に見えにくい革です。履き込むほど皺や艶、色の濃淡が増して、新品の頃とはまた違った表情になっていきます。
コードバンが磨きながら艶を育てる革だとすれば、クロムエクセルは履いて歩く中で少しずつ表情を変えていく革、と言えそうです。多少の傷も気にしすぎず、使い込んでいけるのが魅力ですね。
オールデンなら、クロムエクセルの「403」
オールデンのクロムエクセルを代表するモデルとして挙げたいのが、ブラウンのインディブーツ「Alden 403」です。
インディブーツらしいモカ縫いと丸みのあるトゥルーバランスラストに、ブラウンのクロムエクセルを組み合わせた一足。新品の端正な姿も格好良いのですが、クロムエクセルの特徴を考えると、履き込んだ後の表情も楽しみなモデルです。
デニムやチノパンに合わせて気兼ねなく履き込み、皺や色の濃淡が加わってくると、インディブーツらしい無骨さもさらに増していきます。
クロムエクセルの柔らかさは、ゆったりとしたトゥルーバランスラストや、長時間の歩行を考えたインディブーツの性格ともよく合いますね。
また「403」は、ネオコルク・アウトソールを備えています。レザーソールに比べて天候の読みにくい日に選びやすく、秋口の休日用としても使いやすい組み合わせです。
オールデンの素材や代表的な靴の種類については、以前の記事でもご紹介しているので参考にしてください。

「雨に強い」は、「濡れても平気」とは違う
さて、「クロムエクセル」は雨の日に向くのでしょうか。
革の内部に油分やワックスを豊富に含むクロムエクセルは、雨の可能性がある日にも比較的選びやすい素材です。多少の雨や水滴であれば、乾燥後にブラッシングすることで表情が落ち着く場合もあります。
ただし、「クロムエクセル」というだけで完全防水になるわけではありません。
実際にホーウィン社も、『クロムエクセルには防水性を持たせた仕様を含む多くの種類がある』と説明しています。
There are many variations of Chromexcel, including versions that are cementable and waterproof.
つまり、「クロムエクセル」という名称だけで、一律に防水革と考えることはできません。
さらに、靴の雨への対応力はアッパーだけでは決まりません。
レザーソールは水を吸いますし、縫い目やウェルト、履き口から水が入ることもあります。クロムエクセルのオールデンは「多少の雨の日にも比較的選びやすい革靴」ではあっても、長時間の豪雨や深い水たまりへ積極的に入るための雨靴ではない、と考えるのが現実的でしょう。
天気予報に小さな雨マークがあり、コードバンでは落ち着かない。
そんな日に選べるクロムエクセルの一足があると、雨予報の日にもオールデンを楽しみやすくなりそうですね。
ケアは、油分を足す前によく見る
最後にクロムエクセルのケアについて、少しだけ触れておきましょう。
もともと油分の多いクロムエクセルは、毎回たくさんのクリームを塗る必要はありません。
日常的なケアは、まず馬毛ブラシで埃を払い、乾拭きをするところから始めます。浅い擦れが気になる時は、まず柔らかい布や指で軽くなじませ、ブラッシングして様子を見ましょう。
雨に濡れた場合は、表面の水分を柔らかい布で押さえるように拭き、風通しの良い日陰で自然乾燥させます。早く乾かそうとしてドライヤーや暖房の近くに置くと、革の乾燥や変形につながるため避けたいところです。
乾いた後に革がかさついて見える場合は、クロムエクセルに使用できるクリームやオイルを、目立たない場所で試してから少量使うと安心です。
油分を加えすぎると色が大きく濃くなったり、表面がべたついたりすることもあるので、「とりあえず塗る」より、革の状態を見て必要な分だけ補うくらいがちょうど良いでしょう。
(参考) コードバンが雨に濡れた場合のケアについてはこちら
▷ オールデンのコードバンの季節対策:紫外線と長雨に負けないケアのすすめ
まとめ
今回は、オールデンのクロムエクセルレザーについてお話ししました。
クロムエクセルは、ホーウィン社が100年近く受け継いできた製法で作る、オイルとワックスを豊富に含んだ革です。
しなやかさと丈夫さに加えて、色の濃淡が動くプルアップや、履き込むほど皺や艶が増していく経年変化も大きな魅力です。
コードバンのような張りと光沢を楽しむ一足とは少し違って、天候や小傷に神経質になりすぎず、ガツガツ歩いて、帰宅したらブラシをかける。そんな付き合い方が似合う革ですね。
クロムエクセルは完全な雨靴ではありませんが、ラバーソール仕様のモデルであれば、雨の可能性がある日にも比較的選びやすい一足となります。
これからインディブーツが似合う季節へ向けて、コードバンとは違うオールデンの魅力として、クロムエクセルの一足にも目を向けてみてはいかがでしょうか。
ここまでお読みいただきありがとうございました。