こんにちは、うりちきです。
早速ですが今回は、オールデンの「オーソペディックシューズ」としての側面に焦点を当てたいと思います。
前回の「オールデンの歴史と魅力」の記事と合わせて、ブランドをさらに深掘りする一助となれば幸いです。
オールデンのオーソペディックシューズが生まれた背景
オールデンの歴史と理念
オールデンのオーソペディックシューズについて語る前に、まずは簡単にオールデンの歴史やこだわりについておさらいしておきましょう。
ご存知のように、オールデンは1884年、アメリカ・マサチューセッツ州ミドルボロウで創業し、創業時はカスタムメイドブーツや受注生産の紳士靴が中心でした。
一貫して地元での製造にこだわり、世界大恐慌などの経済的な影響で多くのメーカーが海外移転を余儀なくされる中、オールデンは現地で製造を続けてきました。
合理性と履き心地の追求
イタリア靴に代表される「靴に足を合わせる」考え方とは対照的に、オールデンではアメリカ的な合理性に則って「歩くためのギア」という理念に基づく靴作りを行っています。
履き心地を重要視した靴作りが、「オーソペディックシューズ」の分野への発展に繋がったといえるでしょう。
オールデンの歴史や理念については、前回記事も合わせて参考にしてみてください。
オーソペディックシューズとは?
オールデンの歴史について復習したところで、続いて「オーソペディックシューズ」とは何かということについてお話ししましょう。
オーソペディックシューズの概要
「オーソペディックシューズ」とは、医療用の整形外科靴のことで、足の障害や疾患、外反母趾、O脚、リウマチなどの悩みを持つ人のために作られます。
症状の軽減や治療を目的として、多くは整形外科医の診断に基づいて専門の技術者が製作する医療用の靴となります。
日本ではあまり馴染みのない単語ですが、欧米では既に確立された分野であり、特にドイツの「整形外科靴職人(オーソペディ・シューマイスター)」は整形外科の知識と技術を持つ職人です。
一方でオールデンはアメリカの実用性と快適性を重視したオーソペディックシューズを独自に展開しています。
オールデンとオーソペディックシューズ
前回記事でも触れたように、オールデンは1950年代以降、本格的にオーソペディックシューズの製造を開始しました。
現在も一般的な紳士靴のニューイングランドラインと、足の疾患に対応するフットバランスラインに分かれており、後者がオーソペディックシューズとしての役割を持ちます。
オールデンのオーソペディックシューズの中でも「モディファイドラスト」が有名で、大きく抉れた土踏まずの形状によって、足のアーチを支えてくれる作りが特徴的です。
「モディファイドラスト」の誕生と履き心地の理由
モディファイドラストの開発と特徴
オールデンのモディファイドラストは、買収した医療用シューズ会社が1930年代に開発したオーソペディックシューズ用のラストをベースとして、さらに一般の人向けに快適なものへ改良することで、1963年に完成しました。
ちなみに「モディファイド」とは「改良」という意味で、この経緯が由来となっているといわれます。
モディファイドラストの特徴は、細く絞られた土踏まずと、広々とした足先という独自の形状ですね。
人の足は歩行時に重心が外側寄りになることで疲労を感じやすいのですが、他の整形靴と比べてもモディファイドラストではあえて内側に著しく屈曲させたシルエットを採用することで、強制的に重心がインサイドに向かうように計算されています。
さらに土踏まず部分が大きく吊り上がっていることで、足のアーチを包むように支えてくれるので、ハイアーチ、ハンマートゥ、X脚、甲高、偏平足など、様々な足型にフィットする靴として世界中で人気です。
長時間の歩行でも土踏まずがしっかり支えられることで、足の負担が軽減され、歩行の安定感が高いラストですね。
機能性と見た目との両立
また、オールデンのモディファイドラストは、医療用の整形靴の機能性を持ちながら、見た目もエレガントに仕上げられているので、ビジネスシーンにもカジュアルシーンにも合わせやすい点も大きな魅力です。
履いた瞬間からしっくりと足に馴染むモディファイドラストの履き心地は、甲高・幅広の足の方が多い日本でも非常に高い人気を誇ります。
革靴はおしゃれだけど履き心地が少し苦手だ、という方にこそ一度試して頂きたいラストといえますね。
ちなみに「アナトミカ」のモディファイドラストは甲が低いとよくいわれます。
抜群の履き心地を享受するためには、ラストの履きやすさを過信せずに、きちんとオールデンの店舗や正規代理店でプロのフィッティングを受けることをおすすめします。
オールデンを代表する「モディファイドラスト」については、過去記事で詳しくご紹介しています。サイズ選びなども参考にしてみてください。
オールデンの「Vチップ」とオーソペディックシューズとの関係
Vチップの誕生
オールデンで人気の「Vチップ」ですが、これは1963年にモディファイドラストと同時期に登場し、モディファイドラスト用に「Uチップ」から派生したデザインです。
ダークバーガンディ(54321)とブラック(54331)共に、ホーウィン社の最高級シェルコードバンを採用したモデルで、抜群のアーチサポートとファッション性を両立したこれらはオールデンを代表するシューズといえるでしょう。
オールデンの人気モデル「54321」については、下記の記事もぜひ合わせてご覧になってみてください。
ファッションシーンでの認知と人気の浸透
オールデンのモディファイドラストは、前述したように医療用シューズの木型から発展したモデルでありながら、独特なデザインが次第にファッション業界でも注目されるようになりました。
当時、ニューヨークの「ジャコブソン」など矯正靴の専門ショップのみで取り扱っていたモディファイドラストの靴ですが、ピエール・フルニエなどのセレクトショップのオーナーたちがその履き心地に感銘を受け取り扱うようになったことで、世界中で爆発的に知名度が拡大しました。
その後、日本にオールデンが上陸したのが1980年ですが、最初に持ち込まれたのはペニーローファーをはじめとしたモデルが中心だったそうです。
革靴なのに、まるでスニーカーのように履き心地が良い、長時間履いても疲れない、と次第に日本国内でもオールデンの存在が浸透していきました。
ピエール・フルニエ氏が創業したオールデンのリテーラー「アナトミカ」については、過去記事もぜひご覧になってみてください。
オールデンのオーソペディックシューズの現状と今後
今回お話ししたように、医療用靴としてスタートしたモディファイドラストですが、現在では足の疾患をもった顧客だけでなく、一般の靴愛好家たちにもその人気は広まっています。
独特のアーチサポートが健常者にも履きやすい形状であるため、足に疾患がなくても「履き心地の良い靴」として愛されているんですね。
現代のライフスタイルに合わせ、スニーカーの人気が高まるにつれて、革靴としてのオーソペディックシューズの分野自体は衰退傾向にあり、オールデンのフットバランスラインも縮小しているようです。
その中でも、モディファイドラストを支持する靴マニアは世界的に非常に多く、それによってオールデンのオーソペディックシューズとしての側面は現代でも維持されているといえます。
まとめ
今回は、オールデンのオーソペディックシューズとしての側面に特に着目してみました。
整形外科的なアプローチから生まれたモディファイドラストは、足の疾患に対応しつつ、美しいデザインも両立しています。
足への負担を軽減して、長時間履いても快適な靴を世に送り出している、という点は履き心地にこだわるオールデンらしい側面といえるでしょう。
これからオールデンの一足目を入手する予定の方、またモディファイドラストをまだ試していないというオールデンファンの方は、ぜひ一度抜群の履き心地を体験してみて頂きたいと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。