こんにちは、うりちきです。
季節は初夏になり、軽装の日も増えてきましたね。
シャツ1枚で出かけられるような日には、足元にも少し抜け感を取り入れたくなりますが、そんな時におすすめなのが『オールデンのローファー』です。
靴紐のないローファーは、脱ぎ履きのしやすさが魅力の一つです。
しかしその一方で、「履き心地が合わない」「試着してもいまいちピンとこない」といった、フィッティングに関するお悩みも多いようです。
そこで今回は、ローファーをもっと気軽に楽しむために、
『ラスト(木型)に着目した、足にフィットするオールデンのローファー選び』
についてお話ししてみたいと思います。
これからローファーに挑戦する方はもちろん、既にローファーを愛用している方にも、新たな発見となれば幸いです。
ローファーにとって「ラスト」はなぜ大切なのか
さて、オールデンのローファーを履きこなすには、『ラスト(木型)』に着目することが重要です。
なぜなら、ローファーは他の革靴と違ってレース(紐)で締めることができないため、足の形にぴったり合っていないと、すぐに「かかとが抜ける」「甲が痛い」といった問題が起こってしまうからです。
裏を返すと、選んだラストと足の相性が良ければ、紐が無いことによる履きやすさを存分に享受することができます。
一度慣れてしまうと、なかなか普通の革靴に戻れない。そんな魅力を感じるローファー好きの方も多いようです。
ご存知のように、オールデンは高級紳士革靴メーカーの中でも、ラストの種類が豊富です。
ローファーを上手に履きこなすためには、まずは用いられているラストの性格を知っておきましょう。
主なローファー用ラストの特徴と違い
それでは早速、オールデンのローファーに採用されているラストについてご紹介します。
※過去記事でも触れたことがありますので、良ければそちらも合わせてご覧になってみてください。

オールデンのラスト一覧表 ※画像はThe Shoemartのサイトから
オールデンのローファーモデルには、全11種類(ミリタリーラストとトムラストを含めると13種類)のラストのうち、7種類が採用されています。
今回はその中でも「バンラスト」「アバディーンラスト」「レイドンラスト」「トムラスト」の4つのラストに着目して、形状と履き心地の違いをみてみましょう。
バンラスト(Van Last)

オールデン 986 ダークバーガンディーコードバンローファー on バンラスト
最も多くのローファーモデルに採用されている定番ラストです。
もともとモカシンのために開発されたラストで、『オールデンのローファー』といえば、まずはこの形を思い浮かべる方が多いでしょう。
オールデンの中でも幅広めの部類に入り、最もポピュラーな「バリーラスト」の次に広いラストとされています。
バンラストは、つま先は丸く、全体的にゆったりとしたフィット感が特徴です。
甲も高めなので、日本人の足にも比較的合いやすいラストですね。
特に細身のモデルが足に合いにくい方は、まずはこのラストから試してみるのが良いでしょう。
ちなみにモデルによって、履き口やシュータンの形状が少し異なります。
履きやすさと脱げやすさに直結するポイントなので、同じバンラストだからと過信せず、可能であれば試着してみることをおすすめします。
代表モデル:986、99162(ペニーローファー)など
バンラストはオールデンの定番ローファーである「986」や、日本仕様に調整された「99162」といった人気モデルに採用されています。
※「986」と「99162」については、過去記事で詳しく取り上げているので、ぜひ合わせてご覧ください。
アバディーンラスト(Aberdeen Last)

Alden 664 ブラックコードバン タッセルモカシン on アバディーンラスト
幅広なバンラストから一転して、「アバディーンラスト」はオールデンの中でも最も細くエレガントなラストです。
ドレッシーなデザインのモデルに多いですが、ローファーにおいては、タッセルモカシンに使われることがあります。
細い見た目通り、つま先がシャープで、甲も低いため、サイズ選びには特に注意が必要なラストですね。
スリムではありますが、つま先から甲にかけてぴったりと足に固定される設計なので、人によっては吸い付くようなフィット感を魅力に感じるようです。
代表モデル:563、664(タッセルモカシン)など
アバディーンラストのローファーといえば、やはり「563」や「664」などのタッセルモカシンが代表的です。
ビジネスの場面でもしっかり活躍するエレガントな一足なので、足に合う方はぜひ所有してみて頂きたいと思います。
なお、既にご存知の方も多いと思いますが、タッセルモカシンはオールデンが生み出したスタイルです。
※オールデンのタッセルモカシンについて、詳しくはこちら
レイドンラスト(Leydon Last)

Alden N6214 マディソンスリップオン on レイドンラスト
さて、ポピュラーなバンラスト、アバディーンラストに続いて、ここからは比較的マイナーなラストの紹介です。
「レイドンラスト」は、オールデンのラストチャートの中でも中間的なフィット感を持つラストです。
バンラストよりも細身でシャープな印象を受けますが、比べてみると甲の部分のステッチ(モカ縫い)が異なり、より小さなU字によって無骨さが軽減されています。
(極めて入手は困難ですが)マニアが憧れるウィスキーの96230は履き口が狭く、甲は低めですが、つま先が広めに作られているので、足に合う方からは踵のホールド感に定評があります。
一方、足首近くまで広く足の甲が覆われるので、甲高の方にはあまり適さないラストかもしれませんね。
代表モデル:96230(ペニーローファー)、N8103(タッセルモカシン)、N6214(マディソンスリップオン)など
余談として、ローファーではありませんが、デビット・ベッカム氏も愛用するスエードチャッカブーツ「1493」にも、レイドンラストは採用されています。
トムラスト(Tom Last)

オールデンのコードバンローファー「9616」はトムラスト仕様です
最後にご紹介するトムラストは、通称ユナイテッドアローズ(UA)限定ラストともいわれます。
後にアメリカでも取り扱いが始まったようですが、他と比べると少し入手しにくいラストかもしれませんね。
バンラストと比較すると「シャープで丸い」という表現がされますが、レイドンラストと同様に、モカ縫いが内側で施されることで、Uチップのような見た目も併せ持ちます。
オールデンローファーに特有のボリューム感を抑え、少しフォーマルに見せたいという場面で活躍しそうです。
履き心地としては、レイドンラストよりもさらに細身かつ小さめ、素足や薄手のソックスで履くスタイルに向いています。
代表モデル:9616(ペニーローファー)など
「9616」は、UA別注のダークバーガンディカラー、ペニーローファーです。
ドレス寄りローファーなのでビジネスに使うもよし、スリッポンらしく気軽に履くもよし。目にする機会があればぜひ一度試着してみて欲しいモデルです。
オールデン「9616」について、詳しくはこちら
ラストで変わるオールデンローファーの「履き心地」
ここまで紹介してきたように、ローファーはラストの設計と履き口の大きさ次第で履き心地が大きく変わる靴です。
ここでは、実際のフィッティングにおいてよく起こる悩みと、その原因になりやすいラストの傾向を見てみましょう。
◆ かかとが抜ける
ローファーの悩みで、最も多いのがこのパターンです。かかとが浮いてしまうと歩きにくく、靴擦れの原因にもなります。
これは、踵周りのホールドが甘いラストや、足の甲とラストの形状が合っていない場合に起こりやすい問題です。
特に、幅広で甲高の足の方が、甲の低いラスト(アバディーン、トムラストなど)を選ぶと、前足部が窮屈で、かえって踵が抜けやすくなることがあります。
◆ 甲が痛い・当たる
逆に、甲が当たって痛いというトラブルもよく耳にします。
これは、ラストの甲の高さの他に、靴下の厚みや素材の硬さが影響することもあります。
ローファーは構造上「足を上から押さえて」履くため、甲のフィット感が非常に重要です。
特に、コードバン素材の場合、最初は固くて馴染みにくいので、履き始めに違和感が出やすいという点も押さえておきましょう。
素材でも変わるフィッティング感
オールデンのローファーには、主にコードバンとカーフレザーの2種類が使用されますが、それぞれの素材によっても履き心地は変わります。
◆ コードバン(シェルコードバン)
繊維が緻密で、伸びにくく、馴染むまでに時間がかかる素材です。
そのぶん型崩れしにくく、独特の光沢と耐久性がありますが、最初のサイズ選びは慎重になりたいものです。
アバディーンラストなど、細身のモデルを選ぶ場合には、特にタイトさを感じやすいので注意しましょう。
ゆっくりと足に馴染ませるために、最初のうちは短時間の着用にとどめるのも有効な手です。
◆ カーフレザー
コードバンよりもやわらかく、足当たりが優しい素材です。
履き始めから馴染みやすいので、特にローファー初心者には扱いやすいですね。
足の形状や好みにもよりますが、バンラスト×カーフのローファーであれば、「革靴に不慣れな人にも比較的履きやすい一足」といえるでしょう。
おまけ:靴下の厚みとローファーの相性
ローファーのフィッティングは、当然ですが靴下の厚みによっても印象が変わります。
厚手の靴下だときつく感じやすく、反対に薄手のドレスソックスだと踵が浮きやすくなる場合があります。
そのため試着の際には、普段使うシチュエーションを想定して靴下を選びたいですね。
バンラストやレイドンラストのように、甲がしっかり覆われるラストは靴下の厚みで多少の調整ができます。
一方、細身のアバディーンラストなどは、少しの厚みでも「入らない」と感じるケースがあるため特に注意が必要です。
自分に合うラストを見つけるには?
「ローファーの履き心地が難しい」と言われる最大の理由は、ラスト選びの情報が少ないことです。
以下のポイントを参考に、ぜひ自分の足に合うラストを見つけるヒントにしてみてください。
1. すでに持っているオールデンのラストがあれば、それを基準にする
2. 普段バリーラストでジャストなら、バンラストも相性が良い可能性が高い
3. 細身の足ならレイドンやトムラストも視野に、甲高・幅広ならバンラストから入るのがおすすめ
また、コードバン素材の場合は「履き慣らしが前提」であることも意識しておくと、最初の違和感に戸惑わずに済みます。
まとめ
オールデンのローファーは、スタイルも履き心地も、実は奥が深い一足です。
そして、その「履き心地の決め手」となるのが、ラスト(木型)と履き口の大きさです。
足の形とラストがうまくマッチすれば、紐なしでも驚くほど快適に履けるローファーが完成します。
つまり、「ラストを制する者が、ローファーを制す」と言っても過言ではありません。
春夏に向けてローファーを検討している方は、ぜひ今回の記事を参考に、『足にぴったり合う運命の一足』を探してみてくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。