今回はオールデンの少しニッチな世界、「ウェルト」の形状に着目してみます。
小さいながらも実は靴の印象を大きく左右するウェルトですが、オールデンには主に3種類の形状が使用されています。
それぞれの形や特徴をしっかり抑えて、より一層の”オールデン通”になってください。
ウェルトとは
まずそもそも「ウェルト」とは、革靴のどの部分のことでしょうか。
ウェルトはアウトソールの少し上に、靴の周りを縁取るように巻かれた『細い帯状の革パーツ』のことです。
お手持ちのオールデンの革靴を横から見たときに、アッパー(甲革)とアウトソール(本底)との間に縫い付けられているのが見えるかと思います。
またこのようにウェルトがついているのは、ほとんどのオールデンが該当する「グッドイヤー・ウェルテッド製法」を含む「ウェルト式」の底付けによって作られた靴となります。
「グッドイヤー・ウェルテッド製法」や他の底付け方法については、以前の記事も是非ご覧になってみてくださいね。
コバとは
またコバとは、ウェルトのうち『靴の土踏まず部分よりも前方』かつ『アッパーより外側にはみ出た部分』を指します。
人によってはアウトソールの側面まで含めて指したり、逆にアウトソール部分のみを指す場合もあるようです。
ちなみにコバという名前は、木工用語で木材の断面を指す「木端」に由来し、革靴だけでなく革製品全般で『革の裁断面』を指す際にも使われます。
オールデンのウェルト形状
さてここからが本題です。
革靴の底付けに重要なパーツであるウェルトですが、それぞれ機能性や装飾性が異なる複数の形状があります。
そのうちオールデンによく使用されているウェルト形状は主に3種類となります。
以下に1つずつ詳しくみていきましょう。
フラットウェルト
「フラットウェルト」は、最も基本的なウェルトの形状です。
メーカーによっては「平ウェルト」とも呼ばれています。飾りがなく、ほぼ平坦な断面であるため、見た目はフォーマルな印象を与えます。そのため「内羽根式×ストレートチップ」のようなフォーマルユースの靴は、ほとんどがこのタイプのウェルト形状となっているようです。
オールデンの場合、例えば「9016」や「9071」といったモデルが、このフラットウェルト形状を採用しています。
これらは結婚式などの式事にも使える "ザ・フォーマル”なモデルなので、一足持っていても損はないですよ。
フォーマルなモデルについて、以前の記事もご覧になってください。
ストームウェルト
一方、平坦でないウェルトとして「ストームウェルト」があります。
こちらはウェルトの中央部、アッパーとの接地部付近に山のような盛り上がりがあるのが特徴です。
山がアッパーの端部を覆うことで、防水・防塵性が少し補強されるのがメリットですね。
また見た目については、ウェルト部分のボリュームが増えることで、フラットウェルトより少しカジュアル度や力強さが増す印象となります。
オールデンでは、例えば「1339」のチャッカブーツなどでストームウェルトが用いられています。
印象的なアッパーに負けない存在感がありますね。
ストームウェルトが用いられているモデルについて過去の記事も参考にしてください。
リバースウェルト
そしてオールデンに特に多いウェルト形状が、この「リバースウェルト」です。
こちらはウェルトの半分を割いてYの字にし、割いた部分の下部はアッパーやインソールと縫い付けて、上部はアッパーの側面に沿わせる形となっています。
山形に整えられた「ストームウェルト」と比べて、ウェルトの革断面が露出していることで、よりカジュアルで無骨な印象を与えますね。
オールデンで最も有名と言っても過言ではない「990」シリーズにも採用されているウェルト形状です。
ストームウェルトが採用されているモデルについて、過去の記事も参考にしてください。
しかし、ウェルトを判別する上で注意したいのが、オールデンの「リバースウェルト」と呼ばれているものは、「リバース・ウェルテッド製法(もしくはノルウィージャン・ウェルテッド製法)」によるものではないということです。
(参考)リバース・ウェルテッド製法(ノルウィージャン・ウェルテッド製法)については前回の記事を参考にしてください。
L字に折り曲げたウェルトを使用して、靴側面にウェルト・アッパー・インソールを接合した糸が露出する製法
オールデンの「リバースウェルト」では、ウェルトを割いた上部分はアッパーに沿わせるだけで接合はされていません。ステッチが見られるものも多いのですが、これはあくまで飾りステッチであり、縫い付ける構造にはなっていません。そのため両者を区別して、オールデンのこのタイプのウェルトは「スプリッテッドウェルト(もしくはスプリットウェルト)」と呼ばれることも多いようです。
非常にややこしいのですが、ここの区別がつくと非常に”通”ですね。
オールデンのウェルト長さ
さてオールデンのウェルト形状について一通りみたところで、次にウェルトの長さに着目します。
ウェルト長さは「270度」「360度」の2種類
「グッドイヤー・ウェルテッド製法」のウェルトの長さには2種類あり、靴全体をぐるっと一周する「360度ウェルト」と、ヒール部分以外に巻かれた「270度ウェルト」となります。
「360度ウェルト」は「ダブルウェルテッド」や「オールアラウンドウェルト」とも呼ばれ、「270度ウェルト」は「シングルウェルテッド」とも呼ばれています。
「270度ウェルト」と「360度ウェルト」の違い
革靴における基本的なウェルトは「270度ウェルト」で、これは頑丈さが求められるヒール部分はウェルトによる接合ではなく釘打ちをされることが多いためです。ヒール部にウェルトがない「270度ウェルト」は、ヒールを小さく、全体的にドレッシーに仕上げることができます。
一方「360度ウェルト」では、ヒール部もウェルト接合で仕上げられるため、軽くて柔軟性に優れるというメリットがあります。「360度ウェルト」はヒールが大きくなるため、よりカジュアルな仕上がりが魅力ですね。
ただし最近では「360度ウェルト」にもヒールの釘打ちをすることが多く、これらを使い分ける目的は主に意匠性になっているとも言われます。
結局オールデンのウェルトは何種類あるの?
さて、オールデンでは「フラットウェルト」「ストームウェルト」「リバースウェルト(スプリットウェルト)」の3形状のウェルトがあり、それぞれ長さが「270度ウェルト」と「360度ウェルト」の2種類なので、3×2で合計6種のウェルトがあることになります。
ただし「270度リバースウェルト(スプリットウェルト)」など、オールデンのモデルではほぼ見ない組み合わせもあるため、実際は4~5種と考えられます。
(「270度ストームウェルト」も非常に少ないですが、「4330CY」などのモデルで一応確認は出来ました。そのため多分「270,360×フラット」「270,360×ストーム」「360×リバース」の5種類…だと思います)
まとめ
今回は、オールデンのウェルトの形状や長さについてちょっと細かくみてみました。
少しややこしいですが、内容を簡単にまとめると下記のようになります。
フラットウェルト | ストームウェルト | リバースウェルト(スプリットウェルト) |
---|---|---|
フォーマルな印象 | 力強さと存在感 | ストームウェルトより更にカジュアル |
結婚式にもおすすめ | 防塵性や防水性もUP | 防塵性や防水性も更にUP |
270度ウェルト | 360度ウェルト |
---|---|
ヒール以外の部分に巻かれたウェルト | ぐるりと1周巻かれたウェルト |
ドレッシーな印象に | カジュアル寄りの印象に |
お手持ちのオールデンがどのタイプなのか確認してみたり、次のモデルを検討する際に着目してみてはいかがでしょうか。
またウェルトの交換(リウェルト)に対応しているリペアショップもあるので、修理の際に相談してみるのも良いかもしれませんね。
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